“ 料理と器 ep.1 ” 後記

いつも思うこと。

料理や甘味を通して、空間や、そこに流れる時間迄作りたいという事

料理(甘味)と器が作る空間から、

実際の場(空間)へ連なり 広がるように。

五感で味わうもの。

見て、香り、味わい、歯触りを含む周りの音に耳を傾ける。

その時間がどんどん立体的になるように。

器はこれらの空間を作る(料理と最も密接な)私にとって大切な一員です。

その愉しみ・豊かさを共有したく

立ち上げた「 夕顔と器 」


これから長く続けて行きたい「 夕顔と器 」は、その一つ一つに情景 / 物語がある。

その第一弾

vol.1 改め “ ep.1(エピソード 1)  ” の幕が開きました。


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ep.1 でご一緒した松本美弥子さんの「 星月の台皿 」

その舞台には、「 月 」と「 静けさ 」で繋がる料理を合わせました。

※料理・器についての詳細は「 料理と器 」の項へ記しています。ご覧ください。


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ep.1

「 星月の台皿と、木の実の芋餅 月桃餡 」


箱を開け、包みを解く。

生まれたての初々し入口。その先へ。


お包みは、割れ物を含むことから安全にお届けできることを念頭に置きつつも、

料理と器の作る景色に沿うよう、邪魔をしないよう、心を傾けました。



包みを解き、

料理と器を手に、各々が台所に立つ姿。

同封した「 指南書 」の文字に添い

火を入れ、器に料理の景色を盛り付けてゆく。

その指先。きっと少し緊張の混ざる時間。

秋と冬の混じる季節

ある日の台所にその光景があったこと。

愛しく、

ありがたく思います。

夕顔と器は、ある時は通販にて / またある時は実際の食事会や茶会の場へ広げて行きます。

ep.1は、通販にてお届けしました。

初めての試みは、受け取って下さった皆さまにとっても、

きっと初めての時間 / 体験となるだろうこと、

その一歩へ、手を伸ばしてくださったことに

感謝の思いがあふれます。


それぞれの台所に広がる月桃の香り

古くは「魔除け」にも用いられていた、神秘的で静かな野趣 / 清涼  

木の実、ドライトマトをひと粒 / 一片ずつのせてゆく 

月桃湯の沸く蒸し器

湯気とともに月桃の香りが台所に立ち昇る 

餡にも、月桃の静かな野趣が香る 

ふっくらもっちり

蒸し立ての「 月桃香る木の実の芋餅 」

月が満ちてゆくように 月桃餡をのせてゆく

星月の台皿

その名に沿う、静けさと広がりのある器。

料理のための舞台を作ってくれる、凛とした大皿。

今回、通販でのお届けとなることから、松本さんが器へ込めてくれたもの。

納品時、夕顔へずらりと届いた台皿

その一枚一枚の仕上がりに、松本さんの想いがひしひしと伝わり

一人静かに感動していました。


以下は松本さんの言葉です。

「 今回は通販というかたちによるお届けになりますので展示会などとは違って、

目で見て手に取って選んでいただくことができません。

ですからわたしにできることは藤間さんがいつも使ってくれているこの星月の台皿を、

自分の理想とするイメージを大切にして制作すること、でした。

ご褒美のようなうれしい仕事はこの上なく緊張する仕事となりました。

藤間さんの料理とともに愉しんでいただけますように 」


松本さん、ありがとうございます。

「 料理と器 」は、

その一つ一つが景色となり 形になったもの。

白胡麻を、器の上から下へ線を引くように料理に散らし、仕上げてゆく

器と料理の静けさが繋がるひととき

星月を愛で、月桃香る  月の連なり

器を舞台に広がる料理

あたたかな滋味をゆるりと召し上がれ


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人の動きが加わることで、その景色が鮮やかに立ち上がること。

その場から消えてしまう料理も、流れる時間も、

記憶として残り、新たな時間へ繋がってゆけば嬉しい。




ある方より、嬉しいご感想をいただきました。


「 お餅を蒸している間、月桃の香りが部屋いっぱいに広がって、浄化されたような気持ちになりました。

指南書通りに一つ一つ進める工程。

まるで藤間さんがそばで見ていてくれるような指南書でした。つくりながら温かい気持ちになりました。不思議と。

簡単な工程ばかりなのに、藤間さんの気持ちがじんわりプラスされてちょっと緊張してしまった。

みんなで笑顔でごちそうさまのあともキッチンはしばらく月桃の香りで満ちていました。」



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お届けした「 料理と器 」へ

こんなお手紙を同封しました。


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わたしは、季節と日常の中に見る(心動く)情景を料理にうつしています。

その情景を自分の心情に重ね、

「 香り 」 「 味わい 」「 姿・彩り 」「 温度 」「 気配のようなもの 」として料理にしています。

香り、味わい、見て、食感に触れ、歯触りを聞く。

それら五感を通じ、立体的に広がる愉しみ。

耳を澄ますと、肌から香りから、様々な表情を見せてくれる季節。

(季節もまた、五感で感じるものですね。)

そんな五感で感じる愉しみを、料理から器へ、空間・時間まで広げゆくこと

器は、料理と一番距離の近い「 空間 」で、愉しみの「 はじまり 」なのです。

この器に何を合わせよう? と、想い巡らせる時。

その景色をイメージし、器に料理を盛り付ける時。

(例えば、料理でなくても旬の果実やお野菜の彩りをそっと飾るように置いてゆく)

それだけで、器の上には一つの景色が立ちますね。

その小さな喜びは、その場・空間へ、そして時間まで広がる愉しみです。

「 夕顔 」をはじめた当初から、

大切にしているそんな想いも " 夕顔と器 " へ込めて。


「 料理と器 」をはじまりの日に、

器の上に、ご自身の時間 / 空間に。ご自分だけの景色を育ててくださいね。






こうして皆さまの元へお届けできたこと、本当に嬉しく思います。


はじまりから終わりまで、

慣れないことも多くありました。

その一つ一つと向き合い、確認しながら進めてゆきました。

(ご一緒した松本さんと試行錯誤しながら、

何度も行った配送実験も私たちにとってよき思い出と学びです。)

その時間ごと、今後の糧とし繋いでゆければと思います。


折々に展開してゆく「 夕顔と器 」

料理と器  /  甘味と器  /  茶と茶器

ep.2へ、

続くさまざまな情景と器たち。

次なる機会もどうぞどうぞ愉しみに。



最後になりますが、

お手にとって下さった皆さま、

松本美弥子さんへ

心よりの感謝を込めて。


はじまりをご一緒できたこと、幸せに思います。



2021年  冬の入口に    藤間夕香






夕顔と器 【 料理と器 】

企画・構成 / 料理 / 撮影 : 夕顔 藤間夕香

ep.1  「 星月の台皿と、木の実の芋餅 月桃餡 」

器 : 松本美弥子